高温低サイクル疲労試験

 高温低サイクル疲労試験ってなに?

高温低サイクル疲労試験とは,円形や短形の断面の試験部を有する試験片を使用し,その試験部を外部から加熱して一定の温度に保ち,治具を介して試験片と連結された負荷装置(アクチュエータ)により機械的に繰返し応力や繰返しひずみを試験片に加える疲労試験のことである.

注意すべきことは?

高温低サイクル疲労試験においては,試験片の形状や加工方法,試験機(負荷装置,ひずみ計測装置,加熱装置など),試験方法(試験片の取付け方法,温度計測装置,負荷方法など)のそれぞれに対する配慮を充分施す必要がある.また,試験により得られた結果は,破損繰返し数などを定義に則って求め,整理することが必要である.

試験片

高温低サイクル疲労試験では,試験部(標点部とも呼ぶ)に平行部を有する中実丸棒型試験片を採用する場合が多い.一部では,試験部が連続的に曲率を有する中実砂時計型試験片や試験部断面が短形の板型試験片も採用される.

試験片の状態

疲労損傷過程においては,そのすべり帯や入込み・突出しの形成,き裂の発生に至るまで材料の表面における性状変化が大きな役割を担っている.よって,疲労試験に使用する試験片の試験部の表面仕上げの状態は,試験結果に大きな影響を与える.したがって,試験片の表面は充分に研磨を施し,傷や加工層などを除去することが重要である.特に,引張圧縮試験に代表される軸力試験では,研磨由来の残存傷が試験によるき裂発生を促進することを抑制するため,慣例的に,応力・ひずみ負荷方向と平行な方向に研磨をすることが良いとされている.

試験片の温度測定方法

長時間の安定性が求められる高温低サイクル疲労試験での試験片の温度測定においては,熱電対の使用が最も簡便かつ精度が高いといえる.熱電対による温度測定としては,熱電対素線の先端を疲労試験片の試験部に接触させ,固定することが望ましく,しかし,溶接熱影響や溶融により,溶接部およびその周辺は,試験片の素材そのものの組織から改質され,き裂発生挙動などの疲労特性も変化してしまう場合がある.また,当該部位は応力集中が生じるため,場合によってはき裂の発生源となってしまう恐れもある.このような懸念を回避するため,図に示すように試験部に熱電対を溶融することがある.ただし,試験片の加熱方法にもよるが,この場合には試験部と当該部位の温度が異なる可能性があるため,あらかじめ両者の温度の相関を調べた上で,その関係を基に実際の疲労試験における試験温度制御をすると良い.

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http://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2015_06/jspf2015_06-395.pdf

熱電対以外の温度測定の方法としては,赤外線放射温度計を用いた方法がある.赤外線放射温度計の大きな特徴として非接触で温度測定ができる点があり,例えば真空中での疲労試験においては真空チャンパーの外からの計測ができ,また熱電対の溶接ができないような材料や試験片に対しても有効である.ただし,測定精度を確保するためには,測定対象の放射率を正確に求めた上で温度測定することが必要であり,熱電対に比べるとその精度の保証に工夫が必要である.

参考文献

  1. 疲労試験の試験手法とデータ解析の実例http://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2015_06/jspf2015_06-395.pdf
  2. 鋼の熱疲労に関する基礎的研究

    https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/221657/1/ykogr01037.pdf